Jリーグが好きな人は読了後、多幸感に包まれる作品。津村記久子「ディス・イズ・ザ・デイ」を読みました。

書評

津村記久子「ディス・イズ・ザ・デイ」を読みました。

本情報

作品名:ディス・イズ・ザ・デイ

著者:津村記久子

刊行:2018年6月

読了:2018年10月-11月

読んだきっかけ

本作品は朝日新聞に掲載されていました。

私は新聞を購読していませんが、実家では朝日新聞を購読していました。

この本が新聞で掲載されていたことを知って、私と同じく、Jリーグが好きな母親に、

「この連載って知ってる?」と聞いたところ

「知ってる!知っている!でも、連載が週1とかじゃなくて読めなかった分もあるんだよね?本が出たら買おうと思っていたんだけど、書籍化されたんだね。え、それ買うの!買った方が良いと思うよ!買ったら貸してね~」と言われ、購入する運びとなりました。

(母親は2001年からの川崎サポーター、頭が上がりません)

ディス・イズ・ザ・デイ  の概要と感想

サッカー2部リーグ最終節の日、最終節に臨む各々のチームのサポーターが主人公です。

サッカーの話だけでなく、サポーターの日々の暮らしにも焦点があてられているため、日常の生活の中にクラブが溶け込んでいる様子が伝わります。

その描写が本当に丁寧に描かれているため、本の見開きページの各クラブのエンブレムも相まって、小説に出てくる架空のクラブ、クラブを応援するサポーターの人たちが現実にいるのではないかと思ってしまいます。

(著者の方は全国各地のクラブを取材のため、訪れたと記事で読みました)

元々、スタジアムに行くと、この人たちはどんな理由でこのチームを応援することになったのだろうとぼんやりと思うことが多かったのですが、この本を読んだ後では、その想像する力が膨らみました。

あの人は転勤をきっかけにサポーターになったかも、向こうの人はマスコットに惹かれてサポーターになったかもしれない

そんな想像をしながら、スタジアムの風景を見ると自然と笑顔になります。

この本は、そうしたスタジアムを訪れる楽しみを増幅させてくれ、「Jリーグのある暮らしっていいな」と思わせてくれる、Jリーグ好きなひとが幸せを改めて実感できる素晴らしい作品です。

生涯の中でも、忘れられない一冊となりました。

次項から筆者のエピソードが中心となります。

特に気になった話とわたしと

第2話 若松家ダービー

「家族みんなで同じチームをずっと応援し、それが当たり前だった若松家。高校生になった息子が最近、違うチームの応援に出かけていることに気付きます。しかも、遠征費を稼ぐためにバイトをしてまでいるというのですが…」

この話を読んで、私の友人の家族を思い出しました。彼の一家は、似ている状況です。

名古屋出身のお父さんは名古屋グランパスエイトサポーター

稲本ファンがきっかけだったお母さんはガンバ大阪サポーター

神奈川で育った息子は川崎フロンターレサポーター

このお宅は食卓でもサッカーの話題があがることが多く、対戦前になると特に盛り上がる反面、試合観戦はテレビの奪い合いになることも多かったそうです。

それが劇的に変わったのが、ダゾーンの普及。

それまでは、Jリーグはスカパーでのテレビ放送。

スカパーオンデマンドというでモバイル端末で見る手段もありましたが、モバイルファーストではないため、操作性、映像の品質など使い勝手が悪く、特に彼の両親は使えなかったようです。

この家の話を聞くたびに他チームのことついて常に話ができて羨ましいと思う反面、

応援しているチームが3つもあると、どこかのチームが降格危機など調子の悪いケースも多く、気まずい雰囲気にもなることもしばしばだそうです。

悲喜こもごもですが、まさにこの本で描かれている「サッカーがある日常」です。

第11話 海が輝いている

「地元の勤めている企業がとあるチームのメインスポンサーであった主人公は、転勤をきっかけに、地元を離れ、横浜に転勤になります。

地元にいる間はサッカーのサポーターではなかった主人公ですが、転勤を契機として…」

この章では「サポーターと転勤」というテーマを描いているのですが、私の就職活動時を思い起こされました。

シューカツについて

就職を決めるにあたって、重視した点があります。

幸運なことに複数の企業から内定をもらいました。

友人が会社を選ぶ基準としては、

・仕事内容/やりがい

・給料/待遇

・社風

といったものがありました。

私はこれらに加えて、

・勤務地

・転勤の有無

を重要視しました。

その結果、給料がもっと良いとされている企業もありましたが、転勤が無い今の会社を選びました

正直、お給料はあまりよくありません。

大企業に勤めた大学時代の友人と話をすると、ボーナスなどの話は衝撃を受けることがあるほどです 笑

それでも、今の企業に入ったことを後悔はしていません。

勤務して約10年経ちますが、今でも、「勤務地/転勤の有無」は私にとって重要な項目です。

それは、私が自分の実家や、奥さんの両親、地元の友人関係などが大好きなこともありますが、応援している川崎フロンターレの本拠地が近い、ということがあります。

転勤で首都圏を離れることになったら、等々力に通える機会が激減してしまいます。

モバイル端末手間試合を観ることができることはいえ、やはり生で観たい、興奮を一緒に共有したい、という思いは強く、等々力に日常的に通える範囲に住むという点は大切でした。

この話を読みながら、自分が就職活動をしているときに、企業選びを迷っていた当時のことを懐かしく思い出しました。

ちなみに、私が考える「良い本」というのは、読み進めていくうちに、

自分の中の常識が打ち破られる

自分のぼんやりした考えが言語化されていくと感じる

ことがありますが、この本は見事に後者にあたりました。

他にも好きなエピソードを少しだけ。

第8話 また夜が明けるまで

思い立って、土佐の試合を観るために、夕方に高知行きの飛行機に飛び乗る下りが大好きです。

私も、たまに、「今からアウェイの試合を観るために何時の電車に乗れば間に合うかな」ど、グーグルマップで突然調べたりもします。

実際に行動に移すとどのような展開が待っているのか、自分の身になって、考えてみました。

第9話 おばあちゃんの好きな選手

こちらはサッカー観戦好き、横浜マリノス好きな私の祖母を思い出します。私の場合は、祖母が近くに住んでいるので、遠路はるばるアウェイに観戦に来る、ということはありませんが、もし遠くに住んでいればやりそうだなぁと思いまながら読んでいました。

この話では、「おばあちゃん」が新幹線に乗ってやってきますが、「わたしのおばあちゃん」は、寝台列車に乗ってやってきそうで、想像すると笑ってしまいます。(祖母は87歳ですが、寝台列車 サンライズ出雲に乗って、東京から島根に行くほど元気です)

おわりに

J2が終わるのは、12月頭です。

各エピソードの末尾にはこの季節の表現を記載しているのですが、この表現が何通りもあってよくぞこれだけ言葉の引き出しがあるんだと驚き、表現の多彩さに舌を巻きました。作家さんってすごいです。


ディス・イズ・ザ・デイ


ディス・イズ・ザ・デイ [ 津村記久子 ]

奥さん
奥さん

書評のはずが自分語りになってしまいましたね。
もっと勉強しないとね。

旦那
旦那

はい!